石油連盟はOPRC条約が発効した1995年から、将来に起こりうる大規模な油濁事故災害に備えるため、すでに発生した大事故の教訓を学ぶことを目的として毎年「国際油濁シンポジウム」を開催してきた。この間、タンカー業界、石油業界及び関係国際機関等の努力と協力により、船舶からの油流出事故の著しい減少を見ている。
一方、埋蔵石油資源の開発は従来の陸上部分から徐々に開発の困難な極地や海洋の大水深域へと移動しており、石油の輸送経路にも変化が現れている。事故発生の可能性も新たなタンカールート上やパイプラインの経路上に拡大し、また海底油田からの油流出も発生している。昨年4月にメキシコ湾の掘削現場でプラットフォームが爆発炎上し、海底の坑口から原油が噴出して75日間も封殺できなかったのは記憶に新しい。この事故では総量で78万KLの原油が流出したと発表されており、米国史上最悪の事故となっている。
このような海底油田事故は2009年にインドネシアと西オーストラリアの間のチモール海でも発生しているし、メキシコ湾では1979年にメキシコ側で海底油田であるイクストーク油田の暴噴事故が発生している。
我々は新たな大規模油流出の脅威が、従来型の大型タンカーによるものから長大化しかつ経時劣化する陸上のパイプラインや、上記のような海域あるいは深海域での事故に比重が移りつつあり、深海域での事故対応には時間を要することを学んでいる。流出油は最終的に海洋に流入するケースが多く、タンカー流出でないからといって座視することはできない。
このような観点から、今回のワークショップでは新たな脅威に直面した事故関係者を招聘し、事故対応の課題や問題点について披露願うとともに、会場の出席者にも質疑並びに討論参加の機会を設けてより深い理解を進め、今後の対応準備の一助としたい。
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