ITOPFの統計資料によれば、地球規模で見た油流出事故は近年、件数・流出量ともに著しく減少してきている。これは関係者による事故の予防対策、船舶の安全対策並びに流出時の迅速的確な対応策が整備されたこと、および事故時の国際的な協力体制が整備されてきたことなどが功を奏しているためと考えられる。
しかし、全体の中でアジア地域を採り上げた場合にはこれは当てはまらない。南アジア海域及び東南アジア海域とともに、近年の活発な経済活動に対応してエネルギーとしての炭化水素油の輸送が量的にも通航量的にも増大しており、不可避的なリスクの増大に伴うように事故も増加している。
世界の地域海という観点からは、国連環境計画(UNEP)が17の地域海計画を推進しておリ、東アジア地域ではNOWPAP(北西太平洋行動計画)が2004年から海洋汚染に係る緊急時対応計画を発効し、日本、韓国のほか中国、ロシアも相互協力や情報の共有、資機材の相互融通などが行われることとなっている。ナホトカ号事故では未発効であったが、ヘベイ・スピリット号事故ではNOWPAP はどのような機能を果たしたのか。
またUNEPの地域海計画と重層的に、IMOはIPIECAとともに、世界的な油濁対応体制の整備拡充に関する協力として、グローバル・イニシアティブを推進しており、アジア地域についてもOSRLの協力を得ながら、それぞれの国・地域に適合した緊急時対応計画の策定補助、油濁対応訓練の実施、資機材整備に関する助言等を行い、一定レベルの体制確保を図っている。
東アジア地域では、上記のように、日本が1997年にナホトカ号事故を経験し、最近では2007年に韓国でヘベイ・スピリット号の事故があった。両国ともにそれ以前の事故の経験を踏まえて体制整備を進めていたが、ここで再度事故対応の経緯と問題点を振り返り、これから体制を整備しようとする東南アジア地域等に先例としてアドバイスをまとめ、示唆することがあればそれを生かすことを目的としてこのワークショップを開催する。
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