流出油の性状変化データベース
考察
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1.実験結果と考察

 

(1)夏期、冬期における経時変化実験

(2)経時変化実験による原油の蒸発率

(3)海水温度の中間条件における経時実験

(4)長期経時変化実験

(5)燃料油(重油)の経時変化実験

2.原油の物性によるグループ分類と経時変化パターンとの関連性の検討

3.未実験原油の経時変化推定方法


(2)経時変化実験による原油の蒸発率

時間経過に伴って、消失する原油の軽質炭化水素は、いずれの原油でも波の強弱にあまり影響されず、2時間後には、C7〜8以下が消失し、96時間後にはC11〜12以下が完全に消失した。蒸発率の上昇傾向はいづれの原油もほぼ同等で投入後急激に上昇して、C8前後の炭化水素が消失する頃から緩やかな上昇傾向を示した。
原油が海面上に流出してから蒸発する量は、その原油を構成している炭化水素化合物と原油に与えられる温度によってほぼ決定される。実験結果から、エマルジョン化が進行し始めるといわれているC8の消失は、いずれの原油も夏期で流出してから2時間、また冬期でも4時間経過までには完了している。このことは、原油が流出して、自由拡散が起きている条件下では、原油の構成成分個々の、その温度における飽和蒸気圧に則した蒸発が起きており、構成成分比によって、蒸発率が決まることを意味している。この場合に、波の影響は油の表面積を増加させ蒸発を促進させる役目を果たし、波が強くなれば当然蒸発率は上がるが、その影響はそれ程大きくない。
前項の図-3.14は軽質、中質、重質原油の中から1種類づつ選び、夏期における弱い波での炭化水素成分の消失と経過時間の関係を表したものであるが、この図からいずれの原油も時間経過に伴って消失する炭化水素成分はほぼ同等であることがわかる。これは、波の作用によって原油の表面積が増加し、炭化水素成分の消散が促進されるためと考えられるので、波が存在する状態では、軽質、重質を問わず、飽和蒸気圧に則した蒸発が起きるものと言える。ただし、海水温度で凝固するような高流動点の原油では蒸発を促進させるための十分な広がりは望めないので、この場合には上記の説明は成り立たない。参考データとして、アラビアン・ヘビー原油の蒸発率の経時変化と、流出油中の炭化水素の推移を示すガスクロのチャートを図-1.6に示す。

図-1.6 アラビアン・ヘビー原油の蒸発率変化とガスクロチャート


(1)夏期、冬期における経時変化実験

(3)海水温度の中間条件における経時実験